みなさんこんにちは。

旅の話、18回目です。

歌舞伎に感動し、焼き肉屋でその良さを熱く語りあい、外に出る。

歌舞伎の印象が強すぎて、焼き肉屋で何を食べたか覚えてないほど。

その熱さのまま、ミナミの街をぶらぶら歩く。

おどろくほど、外国人ばかり。

お義父さんが、

「ミナミはエライ変わった」

と言ってたが、ほんとうにそうだった。

何が変わったって、ひっかけ橋でだれもナンパしてないこと。

「だれもナンパしてへんなあ」

「ほんまにナンパしてへんなあ」

わたしたちが感慨深く思うほど、ここはナンパが多かったのだ。

この橋を通るだけで声をかけられたのだ。

若い女がここを通ると、あちこちから若い男が群がってきたのだ。

たぶん。

わたしはかけられたことないけど。(悲しいわ)

ひっかけ橋の上は観光客でぎゅうぎゅう詰めであった。

日本語よりも中国語のほうが通じるドラッグストア、

英語、中国語、ハングル語、が当たり前の看板、

もう大阪ミナミは日本語の通じる外国と思うべきだ。

歩いていると、食欲をそそるにおいが漂ってきた。

金龍ラーメンである。

むかしっからあるラーメン屋。

ミナミに来るたび、このにおいに何度おなかが鳴ったことか。





金龍ラーメン 001






しかしながら、わたしの記憶では金龍ラーメンを食べたことがない。

金龍ラーメンのすぐ近くにある神座ラーメンは何度も食べたが、金龍の記憶がない。

先ほど食べた焼き肉もだいぶ消化しつつあったので、

「金龍ラーメン、食べてみる?」

と提案。

店に入る。

にんにくとスープのにおいが鼻をくすぐる。

金龍ラーメンは何店舗かあって、わたしたちが入ったのはたぶん難波千日前店だった。

立ち食いの店もあるが、ここは座り食いだった。

座り食いといっても椅子があるというのではなく、上がりかまちに腰かけて食べるみたいな感じ。

なかなか不思議な空間である。

店内に客は8割。

外国人率90%であった。

従業員も含めて、である。

おどろいたことに、店員はひとり。

それも若い女の子である。

それもあきらかに外国人である。

その子がもくもくとラーメンを作っている。

なにかの修行のようにラーメンをもくもくと作っている。

食べ放題のセルフのごはんがないよ、と日本語で言われたら、

「しょうしょうおまちください」

と日本語で答える。

いやはやあっぱれなワンオペぶり。

勤勉なのは日本人の特権だと思っていたが。

そうではないなあと思った。

あるいは、日本に来たら勤勉がうつるんかな。

彼女も幼いころには日本でひたすらラーメンをこしらえる仕事をするなんて、考えたことも
なかったやろうな。

グローバル化はすさまじいスピードで広がっているのだ。

さて。

番号が呼ばれ、彼女がもくもくと作ってくれたラーメンを食べる。

スープをすすって、

あ、違う!と思った。

わたしの中の金龍のイメージと違う、と思ったのだ。

金龍ラーメンといえば、こってりぎっとり、となぜか位置付けていたのだけど。

思ったよりもあっさりだった。

見た目は豚骨ぎっとりだけど、そういうラーメンが増えすぎたせいか、

「思ったより、あっさりしてる」

という印象だった。

焼き肉を食べたあとのお腹にも無理なくおさまった。

店にはあとからあとから客がやってくる。

中国人の家族連れがやってきて、ややこしい感じの注文をしている。

店員さん、大丈夫?

わたしはハラハラして、必要ならば助け船を出さねばならない、と虎視眈々とねらっていたのだけど。

そんな必要はまるでなく。

店員さんはそつなく対応していた。

そのうえ、ちゃんとセルフのごはんも設置していた。

やるな。

わたしの若いころを見てるみたいやで。(うそつけ)

残念ながらわたしの出る幕はなかった。

しばらくすると、もうひとり店員さんがやってきてほっとした。

ハラハラしながらずるずるラーメンをすすった夜だった。


つづく


それでは~


とりぶう