とりぶう の 宮古島日記

宮古島移住者の生活。いろいろなことがあるけど、基本的に楽しい方向で生きていく方針です。夫しかちくと認知症お義母さんとの3人暮らし。

2008年06月

男性の品格

(224)

会社帰り、ミヤコさんは、駅で向かいの小笠原さんといっしょになる。

「ああ、どうもどうも。」

ミヤコさんは軽く頭を下げる。

「あ、これはお向かいのミヤコさん。」

小笠原さんも頭を下げる。

「聞きましたよ、小笠原さん。お宅、亭主関白なんですって?」

ミヤコさんがにやにやしながら聞く。

「いやあ、ははは、まあ、それが一番やりやすいんですよ、お互いに。」

小笠原さんは頭をかく。

「奥さん、文句言いませんか?」

「文句は、言わないですね。」

「へ~。よく出来た奥さんだ。

うちのやつなんか、ふたこと目には『何にもしない』と責めますよ。」


ミヤコさんは人差し指を頭の横に立てて、オニの角をあらわす。

「ミヤコさんの奥さんは、よく出来るかただから。

うちの妻はほんとに何にも出来ないんですよ。」


小笠原さんは恥ずかしそうに笑う。

「またまた、ご謙遜。

奥さん、清楚でおしとやかで、家では三つ指ついて待っててくれるなんて・・・。

男の理想ですよね~。」


ミヤコさんはうらやましそうに言う。

「あははは。まあ、中身はどこもよく似たもんなんじゃないですか。」

小笠原家。

いつものようにスウェットに着替えて、風呂そうじを始める小笠原さん。

奥さんがニコニコしながら、それを眺めている。

「ダンナ様、いつもありがとうございますね。」

「うむ。」


小笠原さんは重々しく うなずく。

ミヤコ家。

風呂上り、いつものようにスウェットに着替えて、耳そうじを始めるミヤコさん。

奥さんがにがにがしく、それを眺めている。

「だんだん腹!いつも太うございますね!」

「うん?」


ミヤコさんは重く重く なっていく。

天然記念物キシノウエトカゲ

(223)

日本最大のトカゲをご存知ですか?

え?

上野動物園にいたコモドオオトカゲ?

いまは、コドモつくりでオデカケ?


そんなワールドワイドな話題ではなく。

日本国内で生息するトカゲで最大なのは、

『キシノウエトカゲ』です。


全長40センチほどになる、国の天然記念物だとか。

宮古、八重山地方に住んでいるそうです。

ある日。

『キシノウエトカゲ発見!』

そんなニュースが飛び込んできました。

それも、わたしの家の斜め前の畑から飛び込んできました。

そんな目と鼻の先に天然記念物。

これは話題騒然!

ニュースになるで!

色めきたっていると、色めきたっているのは、わたしだけでした。


なんでも、このあたりでは昔から『ぱりいず』(畑の魚)と言ってよく食べていたとか。

けっこういまでもよく見かけるそうです。

宮古島にいて、得したなあと思うのは、

こういうめずらしい生き物に出会うチャンスが多いことです。

わたしは、大の爬虫類好き。

というわけでもありません。

(なんやそれ!)

でも、日本最大のなんやら、みたいなもんは一度見ておきたい。

ということで、張り込みをしました。

さっきここから出てきた、という石垣の前でしばらく待ってみました。

出てきません。

くる日もくる日も、石垣のあたりをホウキを持ったままうろうろしていました。

ホウキ?

そうじの途中にちょろっとのぞいていただけです。

しかし。

キシノウエトカゲもそんなにヒマではないらしく、そうそう出てきてくれません。

そうなると、見たくなるのが人情。

キシノウエトカゲを見るべく、今日もプチ張り込みを続けています。
(さっとのぞくだけやん!)

でも、三年後くらいにはきっと見れると思うんですよ。

キシノウエにも三年ってね。

男の買い物

(222)

宮古家お迎え、亭主関白の小笠原夫婦。

出かけるときは、いつも奥さんは三歩下がって ついて行く。

買い物に行くときもそうだ。

財布と買い物カゴを持つのは小笠原さんだ。


奥さんは三歩下がってついて行く。

ときどき、奥さんは立ち止まる。

小笠原さんは奥さんが立ち止まるのを、細心の注意を払って見ている。

今日は奥さんは、スパゲッティの棚で立ち止まる。

小笠原さんは戻ってきて、


「今日はスパゲッティにするぞ。」

と宣言してパスタをカゴに入れる。

「いつもありがとうございます。

今日は、スパゲッティ・ボロネーゼですね。」


と奥さんはうれしそうに言う。

小笠原さんは、

「うむ。」

と重々しく うなずき、慌ててトマトの水煮缶をカゴに入れる。

「いつもありがとうございます。あなた。」

奥さんはニコニコして頭を下げる。


食料品の買い物が終わり、夫婦はウインドウショッピングをする。

やっぱり三歩下がって歩く奥さん。

今日は靴屋の前で立ち止まる。

小笠原さんはすばやくそれを察知する。

「今日は、靴でも買いなさい。」

小笠原さんはやはり重々しく言う。

「よろしいんですか?ありがとうございます、あなた!」

奥さんはこころからうれしそうな顔をする。


靴屋に入って、靴を選ぶ奥さん。

ステキな靴が2足みつかった。

どちらも甲乙つけがたい。

真剣に悩む奥さん。

「両方買いなさい。」

男らしくびしっという小笠原さん。

「ほんとによろしいんですか?ありがとうございます、あなた!」

奥さんは今にも泣きだしそうなくらいに喜ぶ。

小笠原さん自身の靴は、もう2年も買い換えていない。

とりぶうの首が・・!

(221)

わたしの首に衝撃が走りました。

上を向くことができないのです。

無理して上を向くと、『世界のナベアツ』が『さーん』と言ったみたいな表情になります。


そういえばちょっとまえ、わたしのまわりで風邪が流行していました。

ひょっとしたら、わたしの体の中で、カゼ菌的ななにかがうごめいているのかも。

それがリンパの中に入り込んでよからぬことを・・・?

美人薄命。

夏目雅子の顔がわたしの頭をぐるぐるまわります。


不安になって、近くの総合病院に行きました。

宮古島は離島のわりに、病院が充実しているのが安心です。

診療開始時間にはまだ時間があるのに、待合はお年寄りでいっぱいでした。

不安なわたしは、『はたしてこの人たちの年まで生きられるだろうか』などと考えてしまいます。

病院に来ているお年寄りは、そこまで生きてる自信からか、

『もう、死んでもこわくないわ』

というような表情をしています。

死んでもこわくないなら、なんで病院に来るんやろ。
(ほっとけ!)

こんなときだけ、みんな『宮古じかん』適用外かよ。
(文句ばっかりやな!)

わたしは、とりあえず整形外科に回されました。

まわりのお年寄りたちは、案外みんな元気そうです。

ええなあ。

わたしはこの年で、ひょっとしたら悪性のなんとかかもしれへんねんで!

とひとりで悲劇にひたっていると、

「とりぶうさん。」

と呼ばれます。

ついに来た。

運命の分かれ道。

ああ、宮古島の海は青かった。


超多忙の整形外科医は、レントゲン写真を見て、早口でいいました。

「首が悪いね。」
(きたか悪性のなんとか・・・)


「首、ですか。」

「うん。頚椎症。これ読んどいて。」

(なにやら難しそうな病名・・・)

一枚の紙切れをわたします。

「あの、原因は?」

「老化。」

・・・・・・・。ええ~~~っ!この年で~~!ありえない~~!
(妥当なとこや!)

できるなら、老化は、ゆっくり歩きたい。とほほ。

外国人の句読点

(220)

南の島大学、学生食堂。

「ウラジミール君、ちょっとこれ教えてください。

『つゆはじめじめする。』に点をうちます。

どこにうつとよろしいですか?」


ホイ君がノートを見せて聞く。

「は?」

ウラジミール君はじっとノートを眺める。

「ああ、これめちゃカンタン。ホイ君こんなの、わかりませんか。」

ウラジミール君はノートに書き込んで言う。

「ホイ君、見てなさい。

この文は『つゆ、はじめ、じめする。』が正解です。」


ウラジミール君が自信たっぷりに言う。

「つゆ、はじめ、じめする?

ワタシ意味わかりません。どういう意味ですか?」


ホイ君がノートをじっと見ながら聞く。

「あっはっは。カンタンです。

そばのめんつゆ、はじめ、じめする、いうことです。」


ウラジミール君は、母国語でなにやらつぶやきながらうなずく。

「『じめする』は、どういう意味ですか?」

ホイくんが、まだわからないというふうに聞く。

「ホイ君、まだまだわかりませんか。『じめする』は、『じめする』や。

えっと、ボクも、自分の国の言葉やったら、説明できますけど、・・・。」


ウラジミール君は、腕をくんでまわりをみまわす。

「あ、ホイ君!あれを見なさい。」

ウラジミール君が壁を指差す。

「ひやしちゅうかはじめました。」

ホイ君がひとことずつゆっくり読む。

「そうや。冷やし中華は、じめたんや。」

ウラジミール君が納得した様子でうなずく。

「ワタシまったくわかりません。じめた?じめました?」

ホイ君は首をかしげる。

「ああ、思いだしましたわ。終わりということです。

『つゆ、はじめ、じめする』は、めんつゆが始まって、終わったいうことです。

『冷やし中華は、じめました』は、冷やし中華は、終わりました、いうことや!」


ウラジミール君はまた、母国語でなにか言いながらうなずく。

「ウラジミール君、あの人、冷やし中華食べてます。」
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