とりぶう の 宮古島日記

宮古島移住者の生活。いろいろなことがあるけど、基本的に楽しい方向で生きていく方針です。夫しかちくと認知症お義母さんとの3人暮らし。

2008年10月

お父さんの正しい子供のしかり方

(324)

ミヤコ家のリビング。

「タマヨ、遅いわねえ。」

ナツミさんが時計を見て言う。

「友達の家にいるって電話があったんだろ?」

ミヤコさんがテレビを見ながら言う。

「そうなんだけど、9時っていうのはちょっと遅すぎない?」

「まあな。」

「最近、あの子ちょっとたるんでるのよね。帰りも遅いし、学校に遅刻もしてるみたいだし。

あなたちょっとガツンと言ってやってよ。」


ナツミさんが握りこぶしを作って言う。

「え~、おまえに任せるよ。

ただでさえ、やりにくい年ごろなのに、そんなこと言ったら、ますます父親に嫌悪感もつよ~。」


ミヤコさんはめんどくさそうに言う。

「何言ってるのよ!あなた、父親の威厳ってものは、こういうときに示すもんでしょ。

嫌われるのはわたしの役目で、あなたはいいとこどり?ちょっと見損なったわよ。」


ナツミさんは腕を組んでミヤコさんをにらむ。

そこへタマヨが帰ってくる。

「あなた、頼んだわよ。」

ナツミさんがミヤコさんの肩をたたく。

「おい、タマヨ、ちょっと来い。」

ミヤコさんはまじめな声で呼ぶ。

「ただいまー。どしたの?」

タマヨは気軽にやってくる。

「タマヨ、最近帰ってくるの遅いじゃないか。」

ミヤコさんは腕組みして言う。

ナツミさんも腕組みして眺めている。

「ああ、ごめん。でもテスト勉強だよ。こんどは英語がんばろうと思ってさ。

ヒナコに特訓してもらってんだ。」


タマヨがちょっとはにかみながら言う。

「おお、そうか、そうか。それなら・・・。」

ミヤコさんが言いかけると、ナツミさんが眉間にシワをよせてミヤコさんをにらむ。

「いや、あのなタマヨ。学校も遅刻が多いらしいし、帰りも遅いからちょっとたるんでるんじゃないか?

だいたい、高校生のあいだは家のルール、学校のルールに従わなければならないさね。

それができないんだったら、一人でやってくしかないんだからな!」


びしっと言うミヤコさんをタマヨはぶ然とした表情でにらむ。

「・・・ってお母さんは言ってるんだぞ!」

阪神対中日プロ野球観戦

(323)

数年前、わたしたちがまだ大阪にいたころ。

阪神対中日のナイター中継を見ているとき、わたしはしかちくに言いました。

「この中日のユニホームの『CHUNICHI』の部分、週刊賃貸の『CHINTAI』の文字と似てない?」

しかちくはちょっと無言。

どや?あたしの目の付け所のするどさに、声も出えへんのちゃう?

わたしが内心得意でいると、

「それ言うの、3回目やで。」

しかちくは静かに言いました。

「うそっ!」

3回も同じネタをやるとは!

さすがあたし、もうネタを古典の域にまで高めている!(ただのボケや!)

驚くわたしにしかちくは追い討ちをかけました。

「おまけにそのネタ、さいしょに言うたんオレやで。」

ええーっ!

どおりでしょうもないと思った
(絶賛してたやろ!)

うろたえながらも、すぐにわたしは言いました。

「ああ、そういえばそうやった。思い出したわ~。あ~、よかった。」

「うそつけ。」

しかちくは、そうめんみたいにあっさりいいました。

「不安やわ~。オレと同い年やのに、おまえどんどん置いてってるよなあ。ほんまにボケ心配や。」

失礼な。ボケより自分のハゲの心配したらええのに
(ほっとけ!)

それ以来、しかちくはことあるごとに、

「これ覚えてるか?」

とテストしに来るのでした。

でもときどき覚えてないことがあり、そんなときは、

「覚えてるよ!バカにせんといて!」

と、逆ギレしてやりすごしました。

守るより、攻めろ。これは鉄則です
(反則や!)

その後、移住騒動があって、わたしのボケもちょっとおさまりました。

母とこのことを笑い話にしたところ、

「あんた、歩くのがええで。わたしも朝歩き出してから調子ようなったわ。

階段の上り下りも楽になったし。何より、ボケ防止にもええらしいわ。」


母は得意そうに言います。

でも、お母ちゃん。もうあたし、半年前から電話のたびにおんなじこと聞いてるんやけど。

ぜんぜん防止されてないで!

魔人・女優ジュンコ

(322)

ジュンコは限界を感じていた。

モデル出身の女優。

華やかなキャリアは、年齢を重ねるとともに重荷へと変わっていた。

いっときは、ちょっと強気でおっちょこちょいのOLが定番の役柄だった。

視聴率をかせげる女優ともいわれた。

しかし、30歳をすぎ、40歳の声をきくようになると、だんだんOL役も減ってきた。


最後に主役をやったドラマが不評だったあとは、ドラマの仕事はなかった。

イメージチェンジといわれて出演した映画の脇役は、こきおろされた。

子どもを失った母親役だったが、あまりにもリアリティがなさすぎると言われた。

演技が下手な女優ナンバー1だと、週刊誌に書かれた。

鏡を見るたびに衰えてゆく容姿も、こころを暗くさせた。

同い年の女優が自殺した。昔つきあっていた俳優が、麻薬事件で逮捕された。


いやなことばっかりだった。いっそ、女優を引退したかった。

毎日、もんもんと考えていた。ノイローゼ気味だったかもしれない。

ある日、空港のロビーで、ひとりの老人からふしぎな花瓶をもらった。

「この花瓶には、たったひとつの願いを叶えてくれる大男の魔人が入ってるんじゃ。

あんたが、ここぞというときに使いなされ。」


老人はにこにことして言った。

たったひとつの願い・・・。有名じゃなくても普通の幸せがほしい・・・。

ジュンコはうつろな目で花瓶を眺めた。気がつくと、老人は消えていた。

ジュンコは花瓶を見つめて、言った。

「たったひとつの願い・・・。どうか、わたしをふつうのおばさんにしてください。なんてね。」

ジュンコが寂しげに笑うと、突然、花瓶の中からしゅるしゅるっと大男の魔人があらわれた。

ジュンコはおどろいて声が出なかった。

トイレから戻ってきたマネージャーは、何事かとあわててジュンコにかけよった。

空港は騒然となりつつあった。

そのとき、ジュンコの携帯電話がなった。


魔人は携帯を指して、

「鳴ってますよ。」

といった。ジュンコはわれに帰って、携帯に出た。

「も、もしも・・・。」

ジュンコがいい終わらないうちに魔人は携帯を取り上げて、電源を切った。

「さあ、これであなたの携帯は不通でした。

これであなたのたったひとつの願いは叶えられました、おばさん!」

うれしそうにそういうと、魔人はしゅるしゅるっと花瓶に戻っていった。

「ちょっ、何っ!?おばさんだって~っ!?あんたにおばさん呼ばわりされたくないよっ!

っていうか、こんなのあり~っ!?こら~~っ!!」

スヌーピーでも安心毛布

(321)

スヌーピーのマンガに出てくるライナスという少年は、『安心毛布』を持ち歩いています。

わたしも長いこと、安心毛布を持っていました。


名前は『においかーくー』。

物心ついたときから、ず~っと一緒に寝ていました。

妹はわたしの『においかーくー』への偏愛ぶりを見て、ふとんとはそんなにいいものか、と思ったらしく、自分のふとんに『においちゃん』と名づけてかわいがっていました。

姉は『ふちんちゃん』というのを持っていました。

しかし、姉と妹は早々にふとん偏愛生活をやめ、わたしだけがずっと『においかーくー』に固執していたのです。


小学生のころはまだしも、中学生になっても『においかーくー』を離せないわたしを見て、母はいいました。

「今度の廃品回収で出すで。」

なんやと!わたしの心のやすらぎを廃品回収に出すなんて!

鬼や!あんたはクマみたいな顔をした鬼や!

「やめて!そんなことしたら、末代までたたるで!」

わたしは応酬します

(自分の子孫をたたるんか!)

ほんまに、『親の心子知らずの逆』とはこのことや
(ややこしな!)

長いやりとりの末、わたしは『においかーくー』を死守しました。

その後、母は廃品回収のたびに『においかーくー』撲滅作戦を計画しましたが、そのたびにすったもんだがあって、失敗するのでした。


高校生になると、『においかーくー』はもはやその面影をとどめないただの綿になっていました。それでもわたしは、綿になった『においかーくー』を守り続けました。

わたしが『においかーくー』から卒業したのは、高校を卒業して大阪へ行くときでした。

そとづらばっかりよくって、人を傷つけるような厳しいこともたくさん言って、

自信満々にふるまって、なのにコンプレックスのかたまりのわたしの泣き言を、

『においかーくー』は18年間聞いてくれました。

ありがとう、においかーくー。あたし、大阪でがんばるわ。

わたしはすこし泣きました。

それから何年かたって、子どもが生まれました。

わたしは何よりも『安心毛布』が大切だと思い、やわらかい「おくるみ」(赤ん坊を包む布)を安心毛布として与えました。

わたしの計画は成功し、子どもたちは『まんまちゃん』と名づけていっしょに寝ていました。


しかし。

小学校に入ってから、子どもたちは『まんまちゃん』といっしょに寝ません。

その他大勢のぬいぐるみといっしょに、ただ並べています。

わたしはいっしょに寝るようにすすめるのですが、どうでもよさそうなのです。

ほんまに、親の心子知らずとはこのことや

(おおきなお世話や!)

外国人が困る日本語の外来語

(320)

南の島大学、学生食堂。

「ホイ君、また宿題なやんでますか。」

ウラジミール君がコーヒーカップ片手にやってくる。

「おはようございます、ウラジミール君。今日は、とてもムズカシイ宿題。ガイライゴ。」

ホイ君がノートを見せる。

「ああ。これは大変ムズカシイやつです。

外国語の日本語や。日本人は、外国語をそのまま使う。これはほんま、ややこしねん。」


ウラジミール君がイスに座りながら言う。

「ワタシ『ゲットする』や、『セットする』などがややこしです。」

ホイ君がコーヒー牛乳を飲みながら言う。

「わかるわかる!そうですねん!

日本人、英語の動詞に『する』、つけるクセ、たくさんあります。あっはっは!」


ウラジミール君はテーブルをたたきながら、大喜びする。

「ワタシ、このまえ、電車乗ってました。

人々、はなししていました。『土地をバイバイする』と聞きました。

ワタシ、自分の土地、売るのときに、さようならすること、思いました。

日本人、とてもやさしい、思いました。

しかし、それまちがいました。

バイバイは日本語でした。売ると買うのこと『売買』いいます。」


ホイ君は笑いながら言う。

「それは、ホイ君的によいまちがいでしょう。

ボクはもっとはずかしのまちがいしました。

ボクは、まだ留学生一日本通ではありませんとき、はずかしのまちがいした。

『シットする』いう言葉、ホイ君、知ってますか?」


ウラジミール君は人差し指を立ててホイ君に聞く。

「『シットする』?それは、あの、えっと、それは英語のシットですか?」

ホイ君はちょっともじもじする。

「な?そう思うやろ?ちがうねん。日本語、むずかしのここですねん。

ボク、日本来てすぐのとき、若い男と若い女と友だちなりました。

ボク、女の子といっぱいしゃべったんや。

それで、男はトイレ行った。

女の子は『男はシットしてる』言うたんや。

ボクは、大便してる思った。

ちがいましてん。

男は小便でしてん。

日本語で小便するのこと、『シットする』や、『おシットする』いうねんな!」

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