とりぶう の 宮古島日記

宮古島移住者の生活。いろいろなことがあるけど、基本的に楽しい方向で生きていく方針です。夫しかちくと認知症お義母さんとの3人暮らし。

2009年03月

大学校の妖怪付属高校

(446)

それは大学の入学式の翌日。何百人も収容できる大教室に妖怪たちはいました。

その名も妖怪『付属あがり』。

ついこの間までほっぺを真っ赤にさせて田舎道を自転車通学していた身には、彼らは同じ国の同じ大学生とは思えませんでした。

わたしが夏みかんなら、彼らはドリアン。
(自分のほうが微妙にええように言うてるやないか!)

彼らは田舎にはいない種類の人種でした。

妖怪たちは『排他的バリアー』をはりめぐらせて、外部学生に対して『鼻笑い光線』を発しています。

そして知り合いを見つけては、

「よおー、おまえも経済かよ~。××は法学部らしいで。」

とかいうのを大きな声でしゃべりまくっているのでした。

なんかしらんけど、鼻につくわ~。

わたしは彼らの我が物顔ぶりを見て、心のなかで悪態をつくのでした。

ええよなあ、あんたらは親の金で学校行かせてもらえて。
(自分もや!)

それに、もっと新入生らしくおどおどしたらどうよ。

あたしなんか、大阪に出てきてからず~っとおどおどしっぱなしやねんからね!
(悲しいわ!)

わたしは自分のやり場のない情けなさを妖怪たちにぶつけていました。

なかでもひとりの小柄で童顔の妖怪は、その風貌とはうらはらに、クジラの回遊のように排他的経済水域を悠々と歩き回り、

妖怪『付属あがり』のなかでも主のような存在感を放っているのでした。

出たな妖怪『童顔クジラ』。
(そのまんま!)

あんたは今は大きい顔してるけどやな、大学ってそういうもんと違うんやからな。

いったん排他的経済水域のそとに出たら、あんたの思い通りにはいかん『そうはいかん連中』略して

『そ連』がたっくさんいて、しまいにだ捕されるんやからな。
(どんな連中や!)

わたしはわけのわからないライバル意識を彼に燃やしていたのでした。

次の日。わたしが同じクラスの女の子と、廊下で大学のシステムについてぎこちない会話をしているところに『童顔クジラ』がやってきました。

「すいません、D24の教室ってどこですか?」

『童顔クジラ』は聞きます。

ちょっとあんた~、さっそく経済水域出て居場所を見失ったんかいな。

あっはっは!

わたしはこころの中で笑いながら教室を教え、自分たちと同じクラスだということを告げました。

すると童顔は、

「えー、自分ら、おんなじクラス?同い年?4回生くらいやと思った。なんや。」

とさっき使った敬語を返せといわんばかりのがっかりさをあからさまに見せるのでした。

うぬぬ、妖怪め!排他的経済水域を出てもそんな態度にでるというのか!

わたしは『そ連』代表として(いつのまに?)、いつかこのクジラをだ捕してやろうと思いました。

そうして、だ捕された『童顔クジラ』は『しかちく』として、わたしの夫となったのでした。

あのときはこんな未来、想像もしなかったんだよなあ。







(追記)

みなさま、いつもご訪問およびコメントありがとうございます!
管理画面の調子が悪くなってから、はや数週間。
いまだに悪戦苦闘しています。
管理画面の切り替わりが非常に遅く、イラチのわたしはPCの前できいいいっと髪を逆立てています。

ところで、クーピーちゃんもおっしゃってたように、
先日『クイズヘキサゴン』が宮古島特集だったそうですね。
残念ながら放映は見ていません。
たしか3月の初旬に『ヘキサゴンの収録があるらしい』というのを耳にしたのですが、仕事が忙しく、またヘキサゴンを見たことがないしなあ、というのもあっていかずしまいでした。
無理してでも行っておけば・・・・。(どうやねん?)
宮古島では芸能人やスポーツ選手をよく見かけます。
この間、図書館に歩いていく途中、『千原兄弟』のお兄さんのほうの家族を見ました。
至近距離だったのですが、とくに何もできずとおり過ぎました。
無理してでも声かけとけば・・・。(だからどうなっったんや!)

宮古島にいると、日本の中心からかなり距離があるせいか、ニュースでおこっている出来事が同じ国のこととは思えないこともあります。
だからのんびりしてるのかもしれないですね。
とりぶう

仕事と休日

(445)

日曜日、うれしそうな顔でゴルフに出かけるひと。

家族そろって動物園に行くひと。

ひとにはそれぞれの休日がある。

そして、休日とは仕事があるからうまれる概念である。

プロゴルファーのことを考えてみよう。

かれらにとって休日とは、ゴルフをしない日のことだ。

ふつうの人にとっての楽しみたるゴルフは、かれらにとっては仕事なのだ。

いくら調子がわるくても、ゴルフをやり続けることが、プロゴルファーの仕事なのだ。

動物園の飼育係はどうだろう。

動物園のキリンの飼育係にとって、休日とは、キリンをみなくてもいい日のことだ。

休日にはキリン以外のことを考える自由が、飼育係には与えられている。

仕事があるから休日がある。

どちらが楽しいという問題ではない。

ぢちらもたのしいというひともいるし、

どちらもたのしくないというひともいる。

それは個人的な問題だ。

毎日おなじことのくり返し。

そして、それはなかば義務づけられている。

そういうものは、仕事といえるかもしれない。

休日には、自由な選択肢があるのだから。

そうすると。

彼は考える。

自分には休日などない。

毎日おなじことのくり返し。

なかば義務化されたことたち。

たのしいときもあるし、たのしくないときもある。

しかし、自由に選べる選択肢はない。

これは一生仕事を続けてゆくということになりはしないか?

雨の日。

散歩に行かない自由さえ、彼には与えられていない。

これが仕事なのだ、と彼はあきらめる。

長いため息がもれる。

自分を見つめる女の顔に、悲しそうなため息を聞かせてやる。

「はいはい、わかったわかった。散歩、連れてくよ、アッキー。

いいよねえ、犬は。毎日が日曜日でさあ。」

魔人・母

(443)

誠はベッドに寝転がりながら、花瓶を眺めていた。

中をのぞいてみてもなにも見えない。きのう奇妙な老人から、

『たったひとつの願いをかなえてくれる魔人が入っている』

といってもらったものだ。たったひとつの願い。誠はポツリとつぶやく。

「感動的な再会なんていうのも、かなえてくれるのかなあ。

お願いです、感動的な再会をかなえてください、なんてね。」

そのとたん、花瓶は誠の手のなかでぶるっとふるえて、中から見上げるような大男が出てきた。

「ご主人様、も~う少しお待ちください。かならずかなえて差し上げましょう。」

魔人はそういうとまた花瓶の中に戻っていった。あっという間のできごとに、誠はしばらく息をするのもわすれていた。

「・・・・ああ、ビックリした・・・。いたんだ、ほんとに。」

誠の両親は3年前に離婚した。ある朝、起きたら母はいなかった。

離婚の原因はよくわからない。誠が大人になったらわかると父に言われた。

簡単に言うと、親戚同士のもめごとに母が疲れたんだと説明された。

誠の家はいわゆる旧家だった。父の両親が同居している。おじいちゃんもおばあちゃんも厳しい人だ。

誠の母は体が弱かった。そのこともおじいちゃんおばあちゃんには気に入らなかったんだろう。

誠は母の白く細い顔を思い出す。出て行く前はほんとうに透き通るように白かった。

離婚の条件は誠を家にのこしてゆくことだった。誠はやさしかった母のことを毎日考える。

もうすぐ運動会がある。小学校のころは、運動会はほんとうに楽しみだった。

運動が得意な誠にとって、一年でいちばん母を喜ばせることのできる日だった。

父も祖父母も、誠に運動なんかできてもしょうがないんだ、勉強しろ、勉強という。

母だけは、誠の運動神経のよさを手放しで喜んでくれた。しかし、それももうかなえられない。

中学の運動会の日。朝から生徒の家族が校庭を陣取っている。

誠は、ひょっとして今日、たったひとつの願いが叶うかもしれない、と思っていた。

魔人だってほんとにいたんだから。あんな大男が。誠は花瓶をかばんの底に忍ばせていた。

運動会が始まる。つぎつぎと競技は過ぎてゆく。誠は観覧席に母の顔をさがすが見つからない。

とうとう誠がアンカーをつとめる最後のリレーまで来てしまった。

赤いはちまきをしめた誠たちのチームは、トップを走っている。

誠はトップのままバトンをもらった。そのとき、観覧席に大男の魔人が見えた。

「あっ!」

誠はそのまま足をもつれさせて転倒した。走者はつぎつぎと誠を追い抜いてゆく。

一瞬、何がおこったかわからなかった。観覧席からは誠を励ます声援が聞こえる。

誠はわれに返り、バトンをつかむと走り出した。先頭はもうゴールしている。

それでも誠は足から血を流しながら走り続けた。結果はビリ。

しかし、まわりから大きな拍手がおこった。魔人は誠に近づいてきて言った。

「いやあ、ご主人さま、よく走りました。ほんとに、よく・・うっ。すいません。感動しちゃって。

感動の最下位!これであなたのたったひとつの願いは叶えられました。よかったですね!」

魔人は涙ぐみながら花瓶の中へ帰って行った。

「ええっ、ちょっと待ってよ!『サイカイ』の意味が違うよ!

勝手に感動するな!お~いっ!」

しかちく知的めざめ

(442)

さいきん、しかちくが読書にめざめました。

それも水滸伝とか平家物語とか歴史モノです。

彼はいつも自分に歴史的知識がないのをなげいていました。

旧石器時代と新石器時代、どっちが新しいんやろう?と悩んでいるような人でした。
(悩むか!)

ところが。なにかの手違いのように、しかちくが『オレ歴史を学ぶ』宣言をしたのです。

さあ、こまった。
(なんで困んねん!)

いままで歴史といえばわたしの独壇場。

しかちくが歴史に強くなったら、わたしの化けの皮がはがれるではないか!

いままでいい加減な知識でごり押ししていたということがばれてしまうではないか!

いつもは、

「あんた、そんなことしたら大塩平八郎って呼ぶで。」

「大塩平八郎って何したひとや?」

「イヤミなことした平八郎。1837年、なんかしらんイヤミなことした大阪人や。」

わたしは豊富で正確な知識を総動員しては悦に入っていたのでした。
(どこが豊富や!)

わたしはひそかにあせりました。

しかちくはわたしのあせりなんかお構いなしに、順調に歴史小説ライフを楽しんでいます。

そしてある日、とうとう言いはじめました。

「あのさあ、源頼朝ってめっちゃオトコマエだったらしいなあ。」

「そらそうや。」

わたしは平然を装って答えます。

そんなん千年前から知ってたわ、といわんばかりの口ぶり。

そして持ってる知識を総動員して対抗します。

「だから嫁の北条政子は頼朝にベタぼれだったはずやで。

ちょうど細木和子がタッキーにまいってしまうようにな。で、マサコが言うねん。

京都で後鳥羽上皇が乱を起こしたときに御家人相手に、あんたらは頼朝公の御恩をわすれたんかいな、と。

忘れてないんやったら早よ京都へ行って戦わんかいな、と。これが1221年、いににい承久の乱よ。」(いににいって何やねん!)

わたしは鼻息あらくまくしたてます。

「へえ~。オレまだそこまで行ってないわ。」

おお、よしよし。もう一生たどりつかんでええぞ。

新石器時代でうろうろしといたらええねん。わたしの中のかわいい悪魔はしかちくのその言葉に溜飲を下げるのでした。
(どこがかわいいねん!)

しかしこの間などは、

「オレ、保元の乱と平冶の乱の内情、はじめてわかったわ。」

などとうなずく始末。ちょっと、それってどうなってんねんな。気になるけど、聞くのはくやしい。

だいたい今まで歴史っていうのは殺しあいばっかりでこわいとか言うてた小鹿のくせに!

「ああ~、あそこらへんはややこしいもんなあ。わかるわかる。」

わたしはあいかわらず2千年前から知ってたという表情で言うのでした。

そして、

「まあ、日本の歴史も長いからなあ。いま平家やろ?それからあれがあって、あいつが来て、あっちに移って、ああ~これは大変やな。」

とたくさん学ぶことがあるぞと強調して、しかちくをあきらめさせようと画策するのでした。

なんかしらんけどイヤミなことを言ってしまう、そんなわたしは平八郎?







(追記)

みなさま、いつもご訪問、コメントありがとうございます!
少し前から管理画面の調子がわるく、記事がうまくアップできていなかったり、コメント欄が開かなかったりというトラブルが起きています。
いつもは予約投稿で朝の6時に記事がアップされるように設定しているのですが、最近きちんといっていないようです。
そのため毎朝そのつどアップということになるので、時間がまちまちになってしまいます。
朝6時にめざましがわりにしていたのに、という方がいたら、非常に申し訳ないです。(そんな人はおらんやろ!)
原因はいまのところはっきりわかりません。わかってるのはFC2さんがぁ、ちょっとぉ、なまけてるとかぁ、それくらいっす。うそです。FC2さんはなまけてません。
PCとかインターネットとかは魑魅魍魎が跋扈するので、わたしのはかりしれないこともたくさんあるのでしょう。ところでワープロを使うようになると、魑魅魍魎などという、書こうと思って覚えたそばから忘れていくような漢字を使うことができるので、便利ですよね。
憂鬱、林檎、麒麟、檸檬、薔薇、どうだどうだ、ふはははは!
何の自慢やねん?

いつもコメントいただくみなさま、ありがとうございます!
ほんとうにいつも楽しく読ませてもらってます。
たけぐしさんのコメントで、わたしのブログにおならの音が入ってるということでしたが、ほんとに!?
音は入れていないので、それはひょっとしたら、ご家族のだれかなのではないでしょうか!あるいはしかちく?(どこまで出張してんねん?)
でもおならの音が出てくるブログっていうのもおもしろいですよね。
それでは明日もお待ちしています!
とりぶう

手相

(441)

ミヤコさんがポテトチップスを食べながらテレビを見ている。

「このポテトチップスが最高さね。

オレくらいのポテチ通になると、なんでもいいってわけじゃないなんだよな。

この『かっちりのり塩チップス』。この厚みがたまらないんだよな。

おまけにこののりがうまいんだよ。

ナツミに見つかったら半分取られるから早く食べよう。」


しばらくして。

「今日ね、手相見てもらったのよ。」

ナツミさんが、テレビを見ているミヤコさんの横にすわりながら言う。

「あ、そう。」

ミヤコさんは興味なさそうに言う。

「わたしの手相って、すごいんだって。なんでも、知能線と生命線が際立ってるって。」

ナツミさんが自分の手のひらを眺めながら言う。

「知能線?そうかあ~?」


ミヤコさんが片方の唇を上げて、ナツミさんの手をのぞき込む。

「そうなのよ。

頭がよすぎてまわりにひがまれないように、うまく隠してますね、って言われたわよ。

当たってるわよね~。」

「モノは言いようだな。」


ミヤコさんは鼻で笑って、テレビのチャンネルを変える。

「生命線はね、ほれぼれするくらい太くってしっかりしてるって。

これはめったいにない長生きの線だって言われだの。」

「まあそれはそうかもな。図太いってことだろ?」

「図太いは余計よ。それよりも、いちばんすごいのは、結婚線なんだって。

ほら、見て。この部分が上向きになってるのが最高なんだって。

ね?わたしの線、すごく上向きでしょ?

それにパートナーにも恵まれてるから、幸せな結婚生活でしょうって言われたの。

わたしうれしくって。だってそのとおりなんだもの。あなたと結婚してよかったわ~。

ねえ、あなたのも見てあげる。」


ナツミさんはミヤコさんの手をつかむ。

「え、いいよいいよ、オレは。」

ミヤコさんは手を離そうとする。

「きっとあなたの結婚線もいいはずよ。見せて、ほら。あら、なあに?ほくろがいっぱい。

それになんかべたべたしてる。ああっ、あなた、『かっちりのり塩チップス』食べたでしょ!」


ナツミさんがミヤコさんの手のひらを見て言う。

「スイマセンって線が出てるだろ?」
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