とりぶう の 宮古島日記

宮古島移住者の生活。いろいろなことがあるけど、基本的に楽しい方向で生きていく方針です。夫しかちくと認知症お義母さんとの3人暮らし。

ニュージーランド滞在記

ニュージーランドの忘れられない味1

(281)

いじきたない道を突っ走るわたしが、忘れられない味。

それはピーターのスパゲッティです。

わたしとしかちくは、10年ほど前、ニュージーランドに住んでいました。

リエンという日本語ぺらぺらの女性と一緒に住んでいたのですが、ピーターは彼女の友達でした。

あるとき、泊りがけでピーターが遊びにきました。

(彼氏ではないが)

ピーターはわたしたちよりも5歳ほど年上。見るからに鍛えてるというからだつき。

全身モミアゲ。

(どんな体や!)

みたいな金色のうぶ毛。

なんか知らんけど、いつも自信たっぷり。

口を開けば、

「英語が上達したかったら、働け!」

とわたしに言うのでした。


あたしは奉公娘か。

「だいたい日本人は英語学校でみんなで群れてちんたらちんたらやってるけど、あんなんで英語が上達できるはずがない。

ほんまに情けないわ日本人。働いたらお金も入るし英語も上達するし、一石二鳥や。

だからおまえもさっさと働け!」

みたいなことを、全身モミアゲ男は早口の英語でまくしたてるのでした。

くやし~。なんで知り合って間もないモミアゲから、そんなこと言われなあかんの!?


全部はわかれへんけど、おおよそ、こんなことを言ってるんだと想像できます。

言い返したいけど、言い返せるようならモミアゲに「働け!」とは言われません。

「I hate you !(めっちゃ嫌い)」

というのが精一杯でした。

心の中で。

(ちっさい人間やな!)

ニュージーランドの人たちは、おおむねみんなやさしくて、日本人に敵対心を持つ人はほとんどいません。

なのに、ピーターは妙に日本人にたいしてつっかかるのでした。

聞けば、ピーターの奥さんは日本人で、彼も日本に住んでいるというのです。

はっはーん。日本人にたいする日ごろのうっぷんを、あたしに晴らしてるというわけかよ。

ちっさい人間やなあ。

(お仲間や!)

でも、その気持ちもちょっとわからんでもない。
(ちっさい人間道?)

すこし同情したわたしは、心の中で、

「I don’t like you.(嫌い)」

と訂正したのでした。

(ほとんどかわってない!)

そしてピーターが帰る前の日。

「ぼくが取っておきの料理をつくろう!」

といいます。

まるで『スイミー』の「ぼくが目になろう!」ばりの自信。

はたしてモミアゲ男の得意料理とは・・・!?
(スパゲッティって言うてたやろ!)

つづく。

ニュージーランドの忘れられない味2

(283)

忘れられない味(1)から読む


全身モミアゲ男ピーターは、『おいしいスパゲッティ』をつくると宣言しました。

フラットメイトのリエンとしかちくは、期待しながら仕事にでかけます。

ひま人であるわたしが買い物に付き合うことになりました。

ピーターは買い物かごに材料をほいほい入れていきます。

いろんな種類があっても、いちばん高級なやつを選びます。

ブランドに弱い。こういうところもちっさい人間です。

そしていちいち自信たっぷりに、

「これはどこそこ産のなになにや。」

といいます。いちいちカチンと腹立たしい。

わたしは、腹話術人形のように、口を動かさずに、

「あんたの手柄ちゃうやろ。」

と日本語でつぶやいていました。

(自分もじゅうぶんちっさい!)

ピーターは腹話術人形は見て見ぬふりをして、最後に大量のミンチを買いました。

4人で食べるには明らかに多すぎ。

まさか、ミンチを棒状にして、パスタとかいうんちゃうやろな?

それを世界ではソーセージというんやぞ。

わたしの心の中の突っ込みをよそに、ピーターは上機嫌でした。

家に帰るとさっそく下ごしらえをはじめます。

まずは包丁とぎから。

スティック状の包丁とぎで、威勢良くといでいるようです。

どや!

どや!

そういうオーラがとなりの部屋にいても漂ってきました。

そっとのぞくと、アントニオ猪木みたいなあごになって、自慢げに包丁をといでいるピーターがいました。まるでサムライもどき。

あんたほんまはニッポン大好きやん。

奥さんにはそういうの、バカにされるんやろなあ。いひひひひ。お気の毒~。

包丁をピカピカにとぎおえたピーターは、次にタマネギをきざみはじめました。

でもピカピカの包丁で、きざんだのはタマネギだけでした。

なんやそれ。いちいちやることが大げさやな。

そして大量のミンチとタマネギを炒めて大きなナベで煮込みます。

わたしは出来はどうだ?と聞きに行きました。

「エクセレント!」

ピーターは自信満々です。

そしてスパゲッティを大量にゆでて、ざるにあげて、威勢良く水で洗いはじめました。

ええええっ!洗う!?

そんなことってアルデンテ!?つづく。

ニュージーランドの忘れられない味3

(285)

忘れられない味(1)から読む


「これはおいしいスパゲッティになるぞ~。」

みたいなことをいいながら、全身モミアゲ男ピーターはじゃぶじゃぶスパゲッティを洗います。

みるみるふやけてゆくスパゲッティ。どんな自信作ができるんやろ・・・。

ピーターはときどきミートソースを味見をしながら、満足そうにうなずきます。

ふにゃふにゃスパゲッティでも、ミートソースがおいしければなんとか食べられるやろ。

わたしは大量のスパゲッティとミートソースを見て、ちょっとおなかがすいてきたのでした。

そうして帰ってきたリエンとしかちくと一緒にテーブルを囲みました。

ふやけたスパゲッティも、ミートソースをかけられたらそこそこサマになっています。

「さ~あ、召し上がれ!」

ピーターの自信満々の号令とともに、わたしたちは威勢よく食べ始めました。

・・・・・・・・・・・・・・・えっ。

何・・・これ?まったく、味なし?ま~~ったく、味なし!

おいおいおいおい、全身モミアゲおっさん、ちょっと待って。

これが、自信作?おいしいスパゲッティ?

この味なしぼそぼそミンチの煮込みふやふやスパゲッティが!?

これ、モミアゲ界ではイケてる味なん?あたしの舌がおかしいの?

見ると、しかちくもリエンも妙な顔つきをしています。やろ?そうやんな?

だれひとり、おいしいとは言いません。修行僧のように苦渋の表情。

もはやスパゲッティのふにゃふにゃ具合なんかはかわいいもんです。

ミートソースのこのまずさ!こんなん生まれて初めて!

4時間もミンチを大量に、ただ、煮込んだだけやないか!

味見して深くうなずいたのは、なんだったんや!というか、味つけてないやろ!

リエンが軽く「コホン」と咳払いして、おもむろに塩とコショウをとりに行きます。

ピーターだけが、がつがつとうれしそうに食べています。

彼は料理のまずさも、この場の気まずさもまったくノープロブレム。

全身のモミアゲをうれしそうに波打たせています。
(動物か!)

・・・ピーター、ひょっとして、これをほんまにおいしいと思ってんの?ほんまに動物的味覚?

ピーターは、「どや?オレ、すごいやろ?」みたいな表情で、ものすごくアピールします。

わたしは目が合って、思わず「・・・おいしいよ。」と言ってしまいました。

ああ~、ちっさい人間!

わたしたちは塩とコショウを奪い合うようにしてふりかけていました。

「おいしくないぞ!」という必死のアピール。

やがてピーターも塩をふりかけました。

おいっ!自分もまずかったんかい!「おいしい」言うたあたしはアホか!

結局、ピーター以外だれもおかわりせず、大量にミートソースは余りました。

いまさらやけど、あんなまずいスパゲッティ食べたことないぞ、ピーター!
(もうおそい)

NZニュージーランド免許取得作戦1

(335)

わたしはニュージーランド(以下NZ)で運転免許をとりました。

日本だと30万もするという教習所通いが、NZではずいぶん安いと聞いたので、

挑戦することにしたのです。NZでは3ヶ月以上滞在すると、

免許取得資格が得られます。わたしは滞在3ヶ月してから教習所に申し込もうと思っていました。


ところが、NZでは教習所がありません。

教官が家に来て、教えてくれるらしいのです。

それを聞いてわたしのナマケゴコロはむくむくと顔を出しました

そんな気ぃつかうこと、まだ後回しでええんちゃうん?

だいいち、英語があやふややで


聞きとれずに事故おこしたらえらいこっちゃ。

おまけにときは春。

せっかくクライストチャーチという美しい町にいるのに、この花たちを楽しまなくってどうするねんな。

と自分に言い訳して、いつも家の中でだらだらしていたところ
(せめて花を楽しめよ!)

「早よ免許とれ!」

と再三再四しかちくにせかされたので、しぶしぶ申し込みました。

わたしはものすごいアナログ人間。信用できるものは自分の足

しかし、NZ一周旅行を計画するしかちくは、自分が運転するばっかりじゃしんどいから、おまえも免許取れ!というのでした。

みておれ、しかちく。

あたしに運転免許を取らせたら、へたくそに走って、ああもうオレが運転する!と後悔させてやるからな
(結婚したこと後悔するわ!)

わたしはその野望を胸に秘め、教官に連絡を取ったのでした
(いらん野望もつな!)

約束の日。玄関にやってきたのは、FedEXの配達の人でした

教官ってFedEXが配達すんの!?

と思っていたら、配達人が教官でした
(なんやそれ!)

短パンにポロシャツにキャップという軽装。まるで何かの配達人のようです。

おまけに全身金色のモミアゲ
(またかい!)

『できるかな』のノッポさんをうさんくさそうにした感じでした

教官はわたしに、

「運転できる?」と聞きました。

ちょっと、あんたアホちゃう?運転できたらあんたはいらんやろ

わたしはあっけにとられて、うさんくさいノッポさんを見ました。

でもノッポさんの言いたかったのは『車の操作をしたことがあるか?』ということでした。

英語の文法ができてなかったわたしのほうが、かすかにアホでした。

わたしはそれまでに一度だけ、しかちくに運転操作を学んだので、

「ある。」

と自信満々に言いました。

しかし、それが後悔の種になったのです。つづく。

NZニュージーランド免許取得作戦2

(337)

免許取得(1)から読む(中盤にあります)


わたしが自信満々に「車の操作をしたことがある」と言ったので、うさんくさいノッポさんは、

「OK。じゃあ、行こうか。」

と言って、自分の車に案内します。

家の前には赤い車が止まっていました。それがノッポさんの車でした。

日本でみかける『教習中』らしき文字は見当たりません。

NZでは筆記試験(かろうじて受かった)に合格したら、運転できる人がとなりにいれば、普通に道を走ってもいいらしいのです。

「きみはそっちに乗れ。」

ノッポさんは運転席にわたしを座らせます。

ええ~!いきなり路上~!

わたしは『笑点』でお題をだされた落語家のようにうろたえました。
(お約束かいな!)

わたしが運転席にすわると、ノッポさんは、

「これがハンドル、これがブレーキ、こっちが、・・・」

となんたらかんたら説明を始めました。

わたしは必死に聞いているのですが、なにぶん基本をおろそかにする人間。
(どこが必死や!)

ノッポさんのなまりと、わたしのナマケゴコロのせいで、半分くらいしか聞けませんでした。

でもしかちくに教えてもらってるから、まあわかるやろ。

そう思い、軽い気持ちで「OK、OK」とあいづちを打っていたのでした。

そうするとノッポさんは、

「エンジンをかけろ。」

と言います。

ええ~、そんなアナタ命知らずな!最初はどっか車のないところで教えてくれるんちゃうの!?

ここけっこう車走ってるで。あたし、車ぶつける自信、満々やで!
(そんな自信いらん!)

わたしは操作を(いいかげんに)習ったものの、実際ほとんど運転したことなどなく、非常に非常にあせったのでした。

こんなことなら最初から「操作したことない」と素直に言うとくんだった。

この手の後悔を、わたしは山のようにしています。

とりあえず、知ったかぶりをする。これがわたしの基本理念なのです。
(その理念捨てろ!)

わたしはこわごわキーをひねりました。

しかし、ひねりが弱く、なかなか車はぶるるんと言ってくれません。

あたふたしているわたしを見て、ノッポさんはあからさまに『あんなに自信満々だったのに』という表情をして、

「もういいだろう。」

と、うさんくさい水戸黄門のように言いました。

わたしはがっかり助さんの気分。
(うっかり八兵衛やろ!)

ああ~、もうすべて投げ出したい。つづく。

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